大学内の変わり者、田嶋春を狂言回しにした青春ミステリー。
ちゃらいイベントサーク「N.A.O」のメンバーは、カースト内で下位にならぬよう空気を読んでスマートに立ち回ることを信条としているような軽薄で傲慢な学生たちだが、田嶋春（タージ）という異分子が和をぶちこわす。
善意の固まりで原則主義者で、間違ったことが許せないタージは、空気を読まずにあれこれとお節介を焼くので嫌われ嘲笑されているのだが、軽薄な学生が隠し持っているコンプレックスを思わず突いてしまい、それが思わぬトラブルの解決につながるという、なかなかに凝った構成のミステリーなのである。
タージの謎解きはサジェスチョンに過ぎず、実際に解決を見いだすのは当事者たちだが、それによってタージに感化され、己の愚かさに気付くところにこの物語のカタルシスがある。
救いようのないゲスな学生も出て来て（数年前も、そして現在も、東大早慶と言った一流大学でこんな事件がよく起きている感）、こいつだけは不愉快だが、面白い学園ミステリーだった。
