本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

股間若衆/木下直之

男性裸体彫刻の扱われ方の変遷を、主に股間に注目しながら論考したユーモラスな美術ルポルタージュ

戦前には美術展に警察の検閲があり、局部を木の葉や布で隠されたり、特別室に置いて美術関係者のみに展覧させるなど苦労があったらしい。木の葉を付けた彫刻を作ってしまう作家もいたとか。

それが屋外にも設置されるようになると、股間にリアリティを持たせず、とろけたり、切断したりという「曖昧模っ糊り」になり(男性バレーダンサーのタイツ姿を想起されたい)、実に股間若衆たちの苦労が偲ばれるのである(笑)。

股間若衆という衝撃的なタイトルで笑ってしまったが、美術新潮に掲載された文章であり、「新股間若衆」「股間漏洩集」と続くので、これは「古今」のパロディだったのかと理解した次第。編集担当者まで股間若衆に取り憑かれたようだが、それだけ訴求力のある実に素晴らしい着眼だったんだろうなぁと思う。