「リバー・ソロー」など、思索的な文学ミステリーで人気の作者による警察小説。
アメリカ中西部の町でタマラという少女が失踪する。語り手であるマックス・スタイナーは、相棒のバンク・アルバーと捜査に当たるが、バン>クには、数年前に義理の娘ジェイミーが失踪しているという過去があり、その状況とクロスさせながら、緻密な捜索劇が展開される。
ミステリーの筋立てとしてはさほど新味はない。ありがちなパターンだと思うが、読みどころは人間関係の濃密な描写だ。
マックスにとってバン>クは単なる相棒ではなく、いじめられっ子だった小学生時代に守ってくれた頼りになる友人であり、更にはバンクが警察官への転身を勧めてくれたおかげで現在のマックスがある。警官としても有能なバンクは、娘の失踪劇以後、ヒーローとしてマスコミに採り上げられるような名物警官である。
自分たちの過去や友情、ジェイミー失踪時の焦燥、現れてくる事情、マックスの家庭内の苦悩などが緻密に語られ、重厚さを持たせる。バンクの元妻サラでさえバンクを憎んでおらず、この人間関係の綾が読みどころの文学ハードボイルドだ。