本・花・鳥(ほん・か・どり)

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備前焼

このところあまり見なくなっていたNHK教育「美の壺」ですが、昨日は備前焼を採り上げていたので、焼物好きとしては見ないわけにはいきません。

備前焼は、現在の岡山県伊部あたりで、中世より壺、瓶などの生活雑器が焼かれていて、茶の湯が興って茶陶も作るようになりましたが、江戸期に入って衰退、細々と人形などの細工物などが焼かれていたようです。

渋い茶褐色の焼締(やきしめ)に映える胡麻、桟切り、火襷などの窯変が美しい現在の備前焼は、昭和になって金重陶陽、藤原啓などが復興したもので、古備前のシンプルで豪宕な美しさを模していますが、古備前は美術品を作ろうとしたものではないので、その分だけ迫力に欠けるような気がします。芸術品のわざとらしさが漂うというか、絵画の模写に勢いが欠けるのと似たようなことなんでしょう。

信楽丹波などと同様、焼締の陶器は好きなので、現在の備前焼ももちろん愛好してはおりますが、信楽あたりに比べると、やや芸術気質が強いような気が致しますね。素材を活かすキャンバスとして、花や料理を引き立てるのが備前の魅力です。

私自身は備前焼の産地へは行ったことがありませんが、焼物好きの両親が伊部を訪れた際、土産に貰った花瓶です。特に名のある陶芸作家の作品ではないと思いますが、シンプルで飽きの来ない焼き上がりが気に入っています。飾りの取っ手が付いていて、余計なものだなと思っていたら、焼きが甘かったのかポロリと取れてしまいました(笑)。