本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

魔法飛行/加納朋子

ななつのこ」続編。女子大生入江駒子の手紙によって謎が提示され、謎解きの返信があるという形は「ななつのこ」と同様だ。今回もあまり物騒な事件はなく、楽しく優しい世界に仕上がっているが、張り巡らされた伏線の快感と、時々挿入されるストーカー的な謎の手紙によって、全編にサスペンスフルなトーンが流れている。

「秋、りん・りん・りん」駒子に意地の悪い振る舞いをする、見知らぬ若い女子大生は、何故出席票に違う名前を書いたのか。それなのに何故食堂に一緒に行こうと誘ったのか。論理的な謎解きにカタルシスを感じる一編。

「クロスロード」ひき逃げ事故のあった交差点に、被害者の父親である画家が息子の肖像画を描いたが、その絵は何故白骨化してきたのか。謎解き自体はさほど難しくもないが、駒子の友人の「たまちゃん」を通して、芸術家の焦りのようなものが浮き彫りになった。

「魔法飛行」駒子と共に学祭の受付に座ったリアリストの友人野枝の幼なじみ卓見は、UFOマニアであり、野枝から冷たくあしらわれている。「不思議」を狂言回しにして、素直ではない男女の心理を楽しく描いてみせていると思う。

「ハロー、エンデバー」メインのストーリーについてはネタ晴らしになるので一切書けない(笑)。タイトルは、スペースシャトルエンデバーに乗り組んでいた毛利衛さんと故郷の子供たちとの交信を見ていた駒子が、「ハロー、エンデバー」という子供たちの呼びかけをドキドキしながら見守っていたことに因むもの。この交信の合い言葉を自分の人間関係に当てはめて考えているのだ。なんて感傷的で気持ちよいエンディングだろう。