池袋とのストリートを駆け抜けるマコト(果物屋とトラブルシューターとフリーライターの兼業)の活躍を描くシリーズの4作目。陰惨な事件を追っている割りには、希望を感じさせるのは毎度のことだ。
「東口ラーメンライン」
池袋を仕切るチーマーのヘッド崇(マコトの友人)の護衛を卒業し、ラーメン屋を開いたツインタワー1号2号(双子の巨漢)の店に、インターネットでの中傷や店へ汚物をまかれる嫌がらせが頻発し、マコトが調査に当たる。謎解き自体は簡単で、もう少し複雑な綾が欲しかったところだが、眼目は、ツインタワーの店に雇われている可憐な少女あずみである。店のまかないは食べずに、駄菓子の隠れ食いをするような不審な行動をしているのだが、その裏には悲しい事情があった。食べ物にまつわる悲哀と幸福が同居した好篇。
「ワルツ・フォー・ベビー」
アメ横を根城にするチーマーのヘッドが殺された事件を、ヘッドの父親のタクシードライバーと知り合ったマコトが調べに当たる。手下に優しく、頼りがいのあったはずのヘッドだが、実は・・・。
タクシードライバーはジャズマニアで、車の中には常にジャズが流れているが、ラストシーンの傷心のドライブに付き合ったマコトがリクエストしたのがビル・エバンスの「ワルツ・フォー・デビー」である。何ともおセンチでベタであざといエンディングだが、あのスウィートで抒情的なメロディを思い浮かべると、グッと来るものがあるのだった(笑)。
「黒いフードの夜」
果物のくずを貰っていくビルマ人の難民少年と親しくなったマコトは、やがて少年が9才の時から強制的に売春させられていることを知る。少年のためにはえげつない真似も厭わないマコトであり、爽快な活躍ではあるが、自警団的な危うさも孕むような気がする。
「電子の星」
マコトの活躍をネット上で知った山形のひきこもりPCマニアから、いなくなった友人を捜してくれとメールが来る。あまりの無礼さに無視していたマコトだが、本人が現れてしまい、致し方なく協力することになる。かなり気味の悪い内容だが、怖じ気づいたひきこもりに「戦わずに逃げるのではなく、せめて負け犬になってみろ」と説教するマコトのメッセージが泣かせる。