本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

黒牢城/米澤穂信

信長に謀反した摂津有岡城主、荒木村重と、村重に幽閉されている黒田官兵衛の二人を主人公にした時代推理小説である。


ここでの荒木村重は剛胆で冷徹で知謀もある武将。毛利や本願寺と手を組むことで信長に叛いている。村重は信長側の使者として訪れた黒田官兵衛を殺さず、土牢に幽閉した。使者や人質を殺すことに躊躇を持たない信長と反対のやり口である。


有岡城は堅牢であり、信長側の攻撃になかなか屈しないが、城中で時折妙な事件が起こり、その解決のために利け者として知られる官兵衛の知恵を借りようとする。幽閉されている官兵衛は、体は衰えているもの頭の回転は相変わらずで、牢の中から村重を翻弄しつつ解決のヒントを与えたりもする。この二人の対話が何ともスリリングで本書の読みどころ。ページを繰るにつれてそのスリルがいや増していく。


謀反は失敗に終わるが、城を抜け出した村重は後に茶人として生きることに。てっきり信長に殺されたものだと思っていたし、この辺の後日談は知らなかった。


米澤穂信の作品は、最初に読んだSFっぽいミステリーの後味がものすごく悪かったので以後読んだことがなかったが、本書は骨太で重厚な時代小説でもあり、大変に面白かった。