本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

家康、江戸を建てる/門井慶喜

出版広告で見た時、荒蕪の地である江戸を秀吉に押しつけられた家康がその後の百万都市になる江戸を築き上げていくストーリーだろうと想像が付き、非常に魅力的なタイトルだと思った。そうしたら直木賞候補になってしまった。

小田原北条氏の征伐後、北条の旧領である関東を、本領である駿河と引き換えに押しつけられた家康は反対する家臣に耳を貸さずこれを受け入れる。江戸には未来があると信じたからだが、その後の家康は脇役(ただし所々で重要な決定をする)で、土木や貨幣経済の実務家たちが江戸の基礎固めの為に奮闘するというストーリーである。

話自体は面白く進行していくが、大概は見当の付く筋立てであり、そこに至る肉付けが浅い。人間の機微を、説明ではなく言動や行動で語らせるのが小説の醍醐味なのだから。もうちょっと重厚な感じで読みたかった。