本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

洞窟オジさん/加村一馬

10年以上前に読んだものだが、ドラマ化されたみたいで、小学館文庫の新刊広告に出ていたので再掲。




折檻のひどい親の元から13才で家出し、以来43年間、野山を放浪し続けた著者のサバイバル記録。2003年、微罪で逮捕されたのを機に文明社会に戻ってきたようだ。

ヘビ、カエル、ネズミ、イノシシ、コウモリ、ウサギ等を捕らえ食用に解体する場面はかなり生々しいが、古来、食物とはこうして採取してきたのだろう。キノコ、山菜、貴重な植物(ジジババと呼ばれる蘭で、当時1株4万円で買う人がいたとか)を採集しては里人に売り、結構いい稼ぎをしていたようだ。

元社長だったホームレス氏と知り合い、字を教えて貰う場面があるが、店の看板が読めるようになって便利だったということで、当たり前のように思っていた識字の大切さを認識した次第。教師(元社長)と教え子(著者)の学校ごっこもちょっとしんみりさせる。

川沿いで暮らし、魚を捕って日々の糧を得ていた著者は釣りの名人で、その頃の知り合いが身元引受人となり、現在は内装業見習いをしているとか。たまに山に逃げ帰りたくなるそうだがが、まるでハックルベリー・フィンのようだと思う(笑)。




余談だが、サンカや芸能民や商工民などの流浪の民に憧れを持っている。民俗学者沖浦和光説では、サンカは江戸末期の飢饉の時に食物を求めて山に逃げ込んだ農民の群ではないかと言うことで、いつの時代も山はひとを受け入れるのだなぁと思う。