本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

退屈姫君これでおしまい/米村圭伍 

磐内藩五十万石から小藩の領主へ嫁いだめだか姫は、日々退屈して「何か面白いことはないかしら」と考えながら暮らしている。いつもならそこへ幕府御庭番の手先である笠森お仙(粗雑で身軽でおっちょこちょい)が「てーへんだてーへんだ」と飛んできて、めだか姫は「素敵素敵」と瞳を輝かせるのだが、今回は様子が違う。

嫁ぎ先まで付いてきた姫の守り役で、現在は奥向きを取り締まるおっかない老女諏訪がはらんでしまい、胎教によくないからと姫におとなしくしているよう命ずるのである(果たして老女がはらんでしまって不義密通とかの問題はなかったのかとも思うが、そこは落語調で楽しい米村圭伍作品だし(笑))。

これではお仙が天下の一大事を持ち込んできても「他を当たってくださいな。そうそう、なんでも日本橋通町に妖を操る若旦那がいるという噂だから、そちらに頼んでみて」と楽屋落ち的な前振りがあり、これでは物語が終わってしまいそうでさぁ大変・・・。

ただし、そこはいつものシリーズのように楽しいドタバタが待っている。江戸の道楽で貧乏侍にとっては内職であった菊作りに、姫の仇敵の田沼意次親子、姫の起こす騒動を心待ちにしている将軍家治などが絡んで、楽しいことこの上ない。

このシリーズも終わりかと思うと残念だが、しゃばけの様に、さほどの進展もないままずるずる続けているよりいいかなぁと思う。