本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

遊覧日記/武田百合子

バブル前夜の東京、或いはその他の地域(群馬のジャパンスネークセンターやら戦後すぐの東京やら)を写真家である娘(武田花)と共に経巡り、風景や人物を活写する短文の紀行エッセイ集。

やや耄碌加減の老女との邂逅とその後の顛末を描いた「青山」など、掌編小説の味わいがあるが、思えばどの章も短編小説的興趣に満ちている。さすが日記文学の手練れ。

裏街的な胡散臭さや時代遅れの事物の残っていた東京を垣間見せてくれるた好著である。好奇心あふれる文章も楽しい。