本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ぼくのキャノン/池上永一

沖縄の風土や伝承をテーマにしてユーモアファンタジーを描く池上永一の作品が好きだ。

「ぼくのキャノン」は当初タイトルからカメラエッセイかと思ってしまったが、今までの作品同様、やはり楽しく切ないファンタジーだった。本の雑誌の今年のベスト10にも入っていまして、ちょっと嬉しい。

沖縄本島のある村、カノン砲を神体にした信仰を村人に強制する強烈なオバァは、合法、非合法な手段で収入を確保し、高福祉、高インフラ整備の生活に寄与しているが、ゼネコン狂乱女や宝探しの無法アメリカ人などが現れて村の生活に波風が立ち始める。

村の繁栄は戦争と一体になっており、沖縄の悲しい歴史と、村の繁栄を陰になり日向になり支えてきた老人達の姿が悲しく美しい。

迫り来る村の危機に、博志、雄太、美奈の三人の子供達が立ち上がり、村を守ろうとする。わりあいパターンだが、賢い子、たくましい子、活発でおしゃまな子と描き分けられた楽しい子供たちで、彼らの成長と勇気がたまらなくいとおしい。

池上作品ではばかばかしいギャグも魅力だが、今回のキモは「寿隊」(笑)。