本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

はぐれ鷹/熊谷達也

自然を愛する内向的で気弱な青年杉浦岳央は、伝統を守る奥羽の鷹匠に弟子入りし、日々辛い修行の日々を送っているが、偏屈で頑固で厳しい師匠の名誉欲に疑問を覚えるようになり、単独での修行を決意する。

ひとり山中で鷹を飼い、鷹匠としてのノウハウを会得しようとするが、そこにテレビ会社社員の幼馴染(片想いの相手でもある)が取材に訪れて心をかき乱され、師匠に譲られた鷹には死なれ、それでも自然の中で奮闘する様が描かれている。

様々な部分の筋の運びに行き当たりばったり感があって、どうも整合性に欠けるような気がするし、主人公も、幼馴染の小山内久美も、言動が薄っぺらで思い入れがしにくい。「邂逅の森」の重厚さが感じられず残念。

この作家の、自然や動物や土着を主題に据えた骨太の物語感、多彩で多作なところが西村寿行に似ているような気がしてきたが、西村同様のもっと読み応えのある作品を期待したい。