本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

啖呵こそ、わが稼業/語り坂田春夫 聞き書き塩野米松

香具師テキ屋)の親分の聞き書きインタビュー。

テキ屋香具師というとお祭りの屋台というイメージがあるが、行商、見せ物、興業、縁起物の露店、占い易者と、さまざまな商売を包含していることが分かる。インチキな商品を巧みな口上で売りさばいたり、タダクレ屋の催眠商法とか、何かいかがわしさが感じられる業種であるが、そこがまた怪しい魅力だったりもするのだ。現在の100円ショップ、フリマ、実演販売、テレビショッピング、消火器商法、健康食品商法(臨時出店のテナントの前で、お年寄りが開店待ちしているのをよく目撃するが・・・)など、すべてテキ屋の末裔だという印象を受ける。

任侠方面との境目が曖昧だったり、ショバ争いの暴力沙汰があったりで、割り振りの利権などにおける警察の締め付けが厳しいそうだが、こういううさんくさい存在を許さない、ご清潔すぎる管理社会というのも窮屈そうな気がする。

自分は、行商・馬借車借などの運輸業者・聖・海賊と海洋商人と武士が一緒くたになったような水軍・遊女・たたら・木地師・鉱山師など、各地を放浪した非定住民・非農耕民の世界にロマンを感じるたちである。網野善彦史学では「道々の輩」などと呼ばれているが、テキヤ香具師もこの末裔という感じがするし、その実態が非常に興味深かかった。親分の語り口もユーモラスで楽しい。