本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ラ・ミッション/佐藤賢一

徳川幕府のフランス人軍事顧問が参加した箱館戦争を描く歴史小説

維新の動乱時、幕府に雇われて軍事教練を担当したフランス軍人ブリュネは、鳥羽伏見の戦いで負けた幕府のだらしなさに業を煮やし(軍事力ではイギリスが付いた薩長に勝ると思っている)、まだ巻き返せるとしきりに上層部に進言するが、フランス公使はもはや薩長に食い込む方針へ転換している。幕府伝習隊に熱く肩入れするブリュネは軍籍を離れ、蝦夷に向かった榎本釜次郎ら脱走幕軍兵士に荷担して戦うのだった。ダルタニャンのごとき熱血漢のブリュネは痛快だが、国益や秩序ということを考えない単純な行動は何だかなぁ(笑)。

五稜郭の戦いを軍事的側面から描いているのは新機軸。土方歳三が散るまでを描いた「燃えよ剣司馬遼太郎」を再読したくなった。そういえば「武揚伝」も未読だが併せて読んでみたい。

土方歳三も登場して来る。命知らずの伝法な剣術使いで、明晰な頭脳でブリュネの教える軍事を体得しているが、ブリュネにイジカタさんと呼ばれて憮然とするあたりが笑える。

それにしても、古代ローマから現代史まで、佐藤賢一の描くのは敗者が多いが、勝者よりも敗者の方に魅力を感じているのだろうか。東北出身者ゆえなのか、と思ったりするが。