本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

家康、死す(上・下)/宮本昌孝 

時代は未だ家康が今川の軛から解放されたばかりの頃、弟の見舞いに出かけた家康を銃弾が襲い殺されてしまう。重臣達の協議の結果、容貌・声音がうり二つの弟を身代わりに立て、嫡男信康が成長するまでこれを家康として支えることにするが、暗殺された家康と替え玉は同日同時刻に生まれた兄弟で、実は身代わりこそが本来の家康であり、このことが後々様々な騒動を引き起こすのだった。

主人公の世良田次郎三郎は家康の政治・軍事における参謀であり、今川家の人質時代から家康が兄のように慕っていた者で、次郎三郎にとって、例え替え玉が本来の家康であっても殺された家康の方に親昵しており、二人の間にはよそよそしさがつきまとう。次郎三郎にとっては徳川家が大事であり、前の家康の嫡子信康に家督を譲らせるべく、現家康を牽制しつつ徳川家を支え続けるのだが・・・。

この手の話で思い出すのは「影武者 徳川家康/輶慶一郎」である。「影武者…」では、悪辣な秀忠が偽者の父家康から将軍位を譲らせようと様々な画策をするのだが、本作では逆に悪辣な家康が信康を追い詰めていく。

好漢を描いてきた宮本昌孝がこんなドロドロな物語を作るんだなぁとは思うが、それはそれでスリリングで面白かった。そして最後のどんでん返し。

それにしても、家康ってのは双子説だの影武者説だのがよく出て来るなぁ。