本・花・鳥(ほん・か・どり)

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謎斬り右近/中路啓太 

「火の児の剣」がむちゃくちゃに面白かった中路啓太作品。

高台院(秀吉の正妻・北政所)の甥・木下右衛門大夫延俊の長男で、剣の腕の立つ木下右近俊基を主人公に、豊国神宝をめぐる争いを描く伝奇時代小説である。

右近は剣の腕は立つものの、血気にはやる単細胞の青年で、よく考えずに行動するところから自ら争いの渦中に巻き込まれて行く。その過程で豊国神宝の秘密を知るが、これ以上話は広がらない。右近の目的はただ一つ、敵方の天海の頤使する山王御供衆にさらわれた想い人を取り戻し、天海に復讐することのみで、神宝を巡る争いは何となく収束して行ってしまうのだ。この手の物語は、謎解きを中心にしてこそ面白くなるはずなのだが・・・。

そこそこは面白いのだが、期待はずれだったせいか読了するのに恐ろしく時間がかかってしまった。もう少し手間をかければ、おそらく作者が意識しているに違いない某有名作品のように波乱万丈型の時代小説になったのにと思う。