「真剣」に続く第二作が文庫化されたのでレビューなど。因みに上泉伊勢守、柳生宗厳、宝蔵院胤栄は「真剣」の主要人物である。
織田信長が世を席巻しはじめた頃、乱世を憂え、世の動きを知りたい正親町天皇の意を忖度し、公家の立入宗継と山科言継は「禁中御庭者」の創設を決意する。天下を静謐に導こうとする信長の動静を探るための組織である。
言継卿と懇意な上泉伊勢守が顧問となり、言継卿や宗継卿、柳生宗厳や宝蔵院胤栄がそれぞれの傘下の若人を集めてくるが、これが異能を持つものの世に出る機会を見出せていない一癖ありげな奴ばかり。
天才剣士ながらやや頼りない肥後もっこす、男勝りの忍び一族の姫、香道で身を立てたい妖艶な陰陽師、役行者の血を引く乱暴者の修験僧、才覚はあるがヘタレで遊び人の商家のボンボンと、なかなか魅力的なキャラで、これが反目したり、友情を見せたり、ボケたりたり突っ込んだりと笑わせてくれる。いつの間にか仲間意識が芽生え、仲間の危機には自分の身を顧みず突っ込んでいく熱い若者たちが気持ちよい。
信長を中心に描く場面が続いたり、やや冗漫でだれる部分もあるがまずは痛快な長編である。