本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

孤剣/藤沢周平 

「用心棒日月抄」に続く時代ハードボイルドシリーズ第二弾。

藩内の内紛に巻き込まれて脱藩せざるを得なかった青江又八郎の帰参が叶って間もなく、藩主毒殺に関わった家老・大富丹後の親族である大富静馬が一味の書類を持って逐電、公儀隠密にも内紛が漏れており、これを取り戻すための密命が下った又八郎は、またも用心棒暮らしをしながら大富静馬を探す羽目になる。

藩の任務のために苦労を強いられる又八郎は、一種の特務工作員という感じがする。剣の腕が立つ上に頭も回るので、この手の仕事にうってつけと思われるのだろう。可哀想だがぼやきの中にそこはかとないユーモアが漂い、何とも言えない味わいを醸し出している(笑)。

一度は斬り合いもしたことのある、藩内忍び組織の江戸での女頭領・佐知は、今回は静馬を探す又八郎をサポートしているが、二人で修羅場をくぐり抜けるうちに情愛の念が芽生えるのも致し方ない。二人の逢瀬のなんと切なくて情緒纏綿たることか・・・。