本・花・鳥(ほん・か・どり)

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NHKスペシャル「長寿企業大国にっぽん」

昨夜のNHKスペシャル「長寿企業大国にっぽん」は大変面白かった。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/070618.html

「日本には、100年を越える歴史を持つ長寿企業が数万社ある、という。
 実は、日本は知られざる「長寿企業大国」なのである。」
このテーマに即し、三つの長寿企業を採り上げていた。

一つ目の長寿企業は鋳物のナベヤである。桶狭間の戦いの頃に創業した鋳物師であり、現在は優秀な治具のメーカーであるらしい。
http://www.nabeya.co.jp/

かなり頻繁に婿養子を取ることで外部の優秀なDNAを導入し、現在まで優良企業として存続している。当代の社長もなかなかハンサムな経営者で、思えば、男系優位の社会にあって、なかなか優れた戦略であると思う。

当代の社長も婿養子で、10数年前に機械化を導入し、これが上手く動かずに苦労したらしいが、番頭と呼ばれる叩き上げ役員の力を借り、機械化システムを立て直すことで現在の業績に結びついているそうだ。

中世の職能民には天皇や寺社に金品を納めることで免状(お墨付き)を貰い、商いの自由を保障して貰った例があるが、このナベヤにも天皇の免状が残されている。まるで隆慶一郎描くところの「道々の輩」のようで、歴史ミーハーとしては何ともわくわくしてしまうのであった(笑)。

金剛組という寺社建築企業は世界最古の企業で、祖は飛鳥時代の渡来人職能集団であるという。

http://www.kongogumi.co.jp/

寺社が建造物を建て直す際に安上がりな鉄筋コンクリート建築にすることが多くなり、金剛組も鉄筋建築を手がけるようになるが、大手ゼネコンとの競争で疲弊した結果、一時は企業存続の危機にまで追い込まれたらしい。

施主側に、長持ちしてメンテナンスの利く木造建築の方が長い目で見るとコスト減になるという利を説明し、本道に立ち返ることで再建中だそうである。木と建築と歴史の関わりが見えて面白いなぁ。

三つ目の例は石鹸・洗剤・化粧品などのメーカー花王だった(創業は明治で約140年前)。800億の売り上げがあったフロッピー事業から9年前に撤退し、本道に立ち返った例を挙げていたが、データのボリュームがふくらんでフロッピーの時代が終わることを予見し、早めに撤退したのが先見の明だったのだろう。そういえば花王のフロッピーってあったなぁ。当時は世界一の規模だったそうだ。

長寿企業には「本業以外に手を出さぬこと」「身の丈にあった経営をすること」「その場の利に目を奪われぬこと」と言ったような家訓がありがちらしい。この三つの企業とも、時折道に迷うことはあっても、この家訓(社訓)にほぼ忠実にやってきた結果が現在の業績であるという訳だ。

昨今のベンチャーや急成長の企業とは正反対の経営ポリシーだなと思う(笑)。