本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ホームタウン/小路幸也

主人公・行島柾人はデパートのトラブルシューターをしている青年で、両親が殺し合いの果てに死亡しており、自分たちに流れる人殺しの血を恐れて妹・木実と離れて暮らしている。

妹から結婚を知らせる手紙が届いて喜んだのも束の間、彼女が行方不明になっていることが判明。そして、逃げるように去った故郷を訪れ探索に駆け回る羽目に・・・。

デパートの顧客のトラブル解決が主人公の任務であり、かつては日米を股に掛けて活躍し世間の裏側にも通じたフィクサー・カクさんが顧客担当部特別室の上司かつ養い親で、探偵術のイロハを柾人に教え込んだという設定は、明らかに「ストリートキッズ」など、ニール・ケアリーを主人公とするシリーズ物(ドン・ウィンズロウ)の模倣だろう。

カクさんや、少年時代に世話になった元ヤクザなど、頼りがいのある助っ人がフォローしてくれるし、何か後ろ暗い調査仕事をしているらしい小学校時代の級友が(文字通り)援護射撃してくれるし、随分都合がいいなぁとは思うものの、この連帯感は悪くない。

優しくて皮肉っぽくて頼りがいのあるカクさんや、下宿先のばあちゃん(デパート内部の鑑査仕事で主人公が不正を暴いた末に、自殺した男の母親)や、オールドタイプのやくざ草場などの造形が気持ちよく、センチメンタルでハートウォーミングなハードボイルドである。

それにしてもこの作家、三作読んだどれもが、作風は違うが家族や故郷をモチーフにしているなぁ・・・。