本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

獣たちの庭園/ジェフリー・ディーヴァー

あざといくらいなどんでん返しが魅力のジェフリー・ディーヴァーによる初の歴史ミステリ。

悪辣なギャングだけを標的にする殺し屋ポール・シューマンは、海軍の罠に嵌められ拘束される。ナチス高官の暗殺と引き替えに、前科を帳消しにしてやるというのである。

SSやゲシュタポなど、治安警察が恐怖政治をふるう狂気のドイツに潜入したポールだが、早々に敵方の人間に怪しまれ、危ういところをアメリカの工作員に助けられる。殺した人間がSSの人間であることが分かり、証拠を消して闘争する二人だが、これを追い詰めていくのが治安警察より格下扱いされているクリポ(刑事警察)の有能な警視なのだった。

不案内な敵地で追われながらしかも任務を果たさなければならないシューマンのわずかな痕跡を嗅ぎ出し、正確に追跡する警視のキャラが面白い。独裁政治に不信感を持っており、人権弾圧に我慢がならない、良き家庭人でもある。皮肉っぽくぼやきながらシューマンをサポートするドイツ人ギャングも楽しませてくれた。

しかし、「どんでん返し職人」とカバー裏で紹介されているような、二転三転するジェットコースター・ミステリーの面白は今ひとつだったように思う。著者初の歴史サスペンスと銘打たれていても、あまり時代感は感じられない。まぁ、そこそこに面白いハードボイルドサスペンスと言ったところだろうか。