本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

纐纈城綺譚/田中芳樹 

戦前の娯楽作家・国枝史郎に「神州纐纈城」という幻の名作があることは知っていたが未読。「神州纐纈城」の結末が物足らないと、田中芳樹が自分で書いてしまったものが本書である。元々「宇治拾遺物語」にある、留学僧円仁の逸話らしい。

唐の宣宗の御世、人の血を絞って布を染める極悪な陰謀結社があることを知り、これを退治せんと乗り込んだ快男児たちの物語である。

単純明快なストーリー展開、勧善懲悪の痛快キャラ、隠された身分、おどろおどろしい怪奇趣味など、何かに似ていると思ったのだが、少年倶楽部文庫の「豹の眼」などだった。あまりボリュームはないが、痛快な怪奇活劇譚。

因みに少年倶楽部文庫とは戦前の雑誌・少年倶楽部に掲載された作品を
再録した文庫のシリーズで講談社から一時的にリリースされていた。自分が中学生の頃に創刊され、あっという間に廃刊になったが、軍国的とでも言う批判があったのだろうか。「村の少年団/佐々木邦」のようユーモア小説や秘境冒険小説など、かなり楽しんだのであるが…。