本・花・鳥(ほん・か・どり)

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かのこちゃんとマドレーヌ夫人/万城目学

かのこちゃんの友情物語と、かのこちゃんの家に飼われる猫マドレーヌ夫人を描いた猫ファンタジー

かのこちゃんは学齢になっても親指しゃぶりの癖の抜けないぼんやりした子だったが、マドレーヌ夫人に親指を噛まれ、「知恵が啓かれて」、「あれは何」「これは何」と尋ねまくる好奇心旺盛な子に変貌する。お母さんの化粧道具をいちいち聞いていって「これ、全部使うの?毎日、大変だね」と感想を述べてお母さんを動揺させたり、お父さんに「刎頸の友」という言葉を教えて貰って語感が気に入り、「ふんけー」「ふんけー」と語り続ける場面がおかしい。リキを入れて「ふんけー」と発音する子供が目に浮かぶようだ(笑)。

入学したかのこちゃんは、同じクラスになったすずちゃんに「こやつできる」と一目置き、何とか「ふんけーの友お友達になりたいと願う。鼻てふてふをしたり、難しい言葉を知っているすずちゃんなのだが、この二人の友情の行く立てがほほえましく、ちょっと切ない。この経緯にマドレーヌ夫人が一役買っており、それはジブリアニメではないが猫の恩返しという感じだ。

奇想とユーモアの筋運びはいかにも万城目学作品だが、女の子と猫の描き方が何ともほほえましくてノスタルジックで、楽しい小品である。