博覧強記の怪奇マニアが、好奇心のままに怪奇を求めて日本中をルポして歩いた記録。週刊プレイボーイに連載されたものなので堅苦しさはなく、気楽な探訪ルポだが、妖怪・珍奇・稗史好きにとっては何ともたまらない内容である。
新日本妖怪巡礼団一行は、江戸の妖怪研究家・平田篤胤を先達とし、天狗小僧寅吉から稲生物怪録まで、彼の事跡を巡り歩いて広島まで足を伸ばす。平田篤胤は桓武平氏の末裔であり、平将門公を祖先として敬愛していた、などという話も初めて目にするが、稲生物怪録の逸話が何とも奇天烈だ。
広島藩の武家の少年稲生平太郎が、百物語の末に現れた妖怪とひと月の間戦った記録なのだと言うが、三十数年後、江戸詰になった元稲生少年の話が藩の江戸屋敷から漏れ、江戸中でブームになったというのだから、今も昔もホラー好きな国民性は変わらない(笑)。稲生物怪録」は、数年前に現代の妖怪マニアたちによって現代語訳されて出版されているが、確かこの中にもアラマタ団長がいたはずだ。
そのほか、龍神・蛇神と暴れ川の関連を考察し、まか不思議な遺跡や建造物を訪ね、人魚や河童のミイラの出所を推理して、物好きな輩にはもうたまらん探訪ルポ(笑)。