本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ストリート・キッズ/ドン・ウィンズロウ

顧客のトラブル処理のための銀行内組織“朋友会”の腕っこき探偵であるニール・ケアリーを主人公にしたシリーズの第一作。

麻薬中毒で売春婦の母親を持ち、路上でスリ稼ぎをするような子供だったニールは、朋友会の有能な探偵ジョー・グレアムの財布をすろうとして捕まり、半ば養育されるようになる。探偵の英才教育を受けさせられる訳である。また、銀行家によって高等教育を受けさせられたニールは、学問に熱意を持っている。

片腕は義手で(これをキコキコいわせる癖がある)悪魔のような笑みを持つ、妖精のような小男というなかなか魅力的なキャラに描かれているジョー・グレアムは、ニールと「坊主」「父さん」と呼び合う仲だが、ニールにとってはトラブルメーカーでもあり、静かな学問生活に闖入してきては厄介な仕事を押しつけていくのだった(笑)。

今回のニールの任務は、失踪した上院議員の娘を連れ戻すことである。アルコールや薬物に溺れる娘は上院議員にとっては頭痛の種だが、良き家族の宣伝用として是非とも必要としているのである。上院議員の俗物ぶりに反感を抱きながら、娘が最後に目撃されたロンドンへ旅立ったニールは首尾良く娘を見つけるが・・・。

ナイーブな心を持つ減らず口叩きであり、調査においては優秀でも腕っ節は弱い、個性的な探偵がかなりドタバタとした活躍を見せるくれる快作ハードボイルドである。そしてセンチメンタルなラストシーン・・・。