本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

あなたにもできる悪いこと/平安寿子

インチキな商品やサービスを売りつけて世を渡る詐欺師まがいのセールスマン檜垣と、無愛想で我がままで強欲な女・畑中里奈がコンビを組んで「地道なカツアゲ」に精を出すユーモラスな小悪党小説。ピカレスクロマン(悪漢小説)と言うほど大きな悪ではなく、とにかくセコい(笑)。

金が好きで、いい加減なものを口先三寸で売りつけるのが好きと言う檜垣だが、大きな金には縁がなく、裏で畑中里奈がネジを巻いても、一般人の懐からかすめ取るのは大きくても50万くらい。どこかお人好しの部分が見えて面白い。この二人にはこれくらいが身の丈に合っているのだろう。

畑中里奈の後ろにいる時任は檜垣の高校時代の友人で、M資金のようなどでかい金融詐欺に取り憑かれて身を滅ぼそうとしているが、こういう風にはなりたくないセコい二人なのである。

セクハラじじい、不倫教師、NPOを乗っ取って成り上がろうとしている善意の押し売りボランティア野郎(爽やかで熱意があって人たらしで独善的で、何となく野口健を思い浮かべてしまう(笑))、神懸かり少年の周囲の欲得、選挙がらみの利権など、善人ぶった一般人の隙を衝くセコいカツアゲが痛快だ。