本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

海国記 平家の時代/服部真澄

経済摩擦や謀略などを得意とする著者の手がけた歴史小説で、物流の視点から源平の盛衰を描いている。

上巻に登場するのは「渡し」と呼ばれる伝説の水主一族の楫師(かじとり)・水竜、水竜に買われた日宋の混血少女・千鳥、淀川の水運を仕切る女傑・賀茂の真砂、検非違使に上がったばかりの少壮武士・平正盛などで、彼らは、九国(くこく=九州)から淀川までの海の道が財物を運ぶ道である事を知っており、朝家に唐物を貢進しつつ、自分らも巨大になっていくのだが、これらの血が混じり合って、傑物・清盛が誕生する。

50年以上のスパンを上下二巻で描いているので、時代が跳躍してしまうのが残念。清盛を産み出した祖先達の物語をもうちょっと読みたかったような気がする。

奢れる平家は久しからずで、孫を皇位に就けたい清盛の妄執から平家凋落が始まるが、海商としての平家、農耕民の親玉である源氏の対比などももうちょっと描かれると興味深かったと思う。でもまぁ、面白い歴史小説だった。



余談ですが・・・。
清盛の死因を探るような研究をしている好事家の医師の話を新聞で見た事があるが、猩紅熱ではなかったかということだ。

この病気がなければ清盛はもう少し寿命があり、源平の戦いの帰趨は違った展開を見たかもしれない、などともあったが、こういうことを考えるのも歴史のIFの面白さだ。