本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

三国志/柴田錬三郎 

桃園の誓いから赤壁の戦いまで、あっという間に(300ページほど)語られてしまうシバレン版三国志

解説を読むと児童文学として書かれた由が書かれていて、なるほどなと思った。精緻な政治状況の描写とか、戦いに赴く悲壮感やヒロイズムなどは描かれず、劉備一派はあくまで正義、曹操は悪役と、色分けが非常にはっきりしているし、確かにスラスラと読みやすい。

しかし、子供向きと思えるような手抜き感はなく、昨今の文庫書き下ろし時代小説くらいの文章だと思う。昔の子供はこのくらい読解力があったと言うことか。

そういえば、中学生の頃に講談社から創刊された少年倶楽部文庫(戦前戦中の少年誌「少年倶楽部」に掲載された冒険小説や時代小説を採録したシリーズ)を愛読していたが、内容は荒唐無稽にしても、小説としてそれなりの結構を備えていたように思う。昔の少年は、ああいう小説群を読むことで文章力を養ったのかもしれない、なんて考えたりする。