木曜日にはココアを/青山美智子
目黒川沿いの、落ち着いた佇まいのカフェで店員をしている若者は、木曜日になるとやって来てココアを注文する女性に心惹かれているが、ほのかな恋心を語っているだけで行動には出ない。ただホッとするような独白が続くだけ。そして、物語の登場人物は少しずつ重なりながらぐるりと輪を描く。
特に印象的だったのは、ハウスハズバンドが家を空け、子供の弁当を作ることになったキャリアウーマンが卵焼きを上手く作れない物語。心折れそうになる主人公だが、やさしい救済が待っている。どのお話もそんな感じで、優しく、心温まる物語だ。