本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

青山美智子作品を二作

木曜日にはココアを/青山美智子

目黒川沿いの、落ち着いた佇まいのカフェで店員をしている若者は、木曜日になるとやって来てココアを注文する女性に心惹かれているが、ほのかな恋心を語っているだけで行動には出ない。ただホッとするような独白が続くだけ。そして、物語の登場人物は少しずつ重なりながらぐるりと輪を描く。


特に印象的だったのは、ハウスハズバンドが家を空け、子供の弁当を作ることになったキャリアウーマンが卵焼きを上手く作れない物語。心折れそうになる主人公だが、やさしい救済が待っている。どのお話もそんな感じで、優しく、心温まる物語だ。

 
 

月曜日の抹茶カフェ/青山美智子

「木曜日にはココアを」のスピンオフ作品。月曜は定休のカフェで特別イベントとして抹茶が提供されている。そこに来合わせた客と、抹茶を点てる若旦那のやり取りから始まり、そこからつながる様々な人物が主人公となって物語が展開されるのは前編と同じ構造。同じようにいい話が連なり、最後に円環が閉じる。読後感良し。