本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記/松浦晋也

出版広告を見た際、副題が気になって読んでみた。当方も独身50代で介護を経験したからだが、遥かに壮絶だった。


著者は科学ジャーナリストで独身。同居していた母親の言動がおかしくなっきて、認知症を疑うも、認知症でなくて欲しいという思いもあり、初動が遅れたと後悔している。


嫌がる母を医師のもとへ連れて行き、アルツハイマー認知症の診断が下されるが、介護保険などは利用せず、すべて自分で引き受けようとする。反抗的になり怒りっぽくなった母は失禁もするようになり、著者は疲れ果て、幻覚を体験するように。弟妹のすすめでやっと介護保険の利用に思い至る。ここでも初動の遅れを後悔している。


ケアマネージャー、ホームヘルパーが介入し、デイサービスなども利用するようになってやっと一息。地域包括支援センターは介護不安の家族のためでもあるのだから、さっさと利用するのが良いのである。


当方は姉弟とも独身で母親と同居。生活介護は自分で、身体介護は主に姉が受け持ってくれたが、食事介助、排泄介助を自分がすることもあり、著者の苦労が少しは分かる。亡母の場合、病的な被害妄想で周囲を困らせるのが一番の苦労だったような気がする(後に服薬にて寛解)。


閑話休題、落ち着いたかに見えた著者の介護だが、徐々に悪化してくる母親にキレてついに暴力に。ここまでよく正直に綴ったものだと思うが、そこまで追い詰められていたのだろう。暴力こそなかったが、亡母に対して怒鳴ってしまうことはあり、まぁちょっと自分の反省点でもある。


介護のパターンは千差万別であろうが、誰かの参考にはなろうかと思える著作である。