本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

阪急電車/有川浩 

阪急電車今津線をモチーフに電車に乗り合わせた人たちのドラマを描いた連作小説で、袖すり合うも多生の縁を描いている。

登場するのは今から始まる恋の若い男女だったり、婚約者を寝取られた復讐に結婚式に白いドレスで討ち入りした女性だったり、賢明な老女の一言でデートDV男に愛想を尽かすことにした女子大生だったり、それぞれの人生がほんの少し関わり合ったり離れたりしながら、落ち着きのいいところへ着地していく。

短編とも言えない、掌編小説のようないい話をよくもこれだけ揃えられたものだなと感心する。人生の機微もあり、なかなかに読後感良く、深みのある小説だった。2008年に出た本だが、今まで読んでなくて損したな。