少し前の直木賞受賞作。戦後の占領から本土復帰までの混沌を悲惨さと滑稽さを織り交ぜて描き出した一大叙事詩である。
米軍基地から物資を盗み出す戦果アギヤーと呼ばれる盗賊一味。そのリーダーであるオンちゃんはカッコ良く颯爽とした快男児の義賊で、彼を取り巻く弟レイや幼なじみグスクや恋人ヤマコのヒーローだ。
他の戦果アギヤーと組んで大がかりにキャンプ・カデナを襲ったとき、米軍から思わぬ反撃に遭い、命からがら逃げ出したオンちゃん一味は散り散りになる。グスクは上手く逃げおおせたがレイは捕まり、オンちゃんは行方不明に。
元々無鉄砲で短気だったレイはやくざ者（後に活動家）になり、お調子者で怠け者のグスクはなぜか有能な警官になり、気の強いヤマコは有能な教師になり、それぞれがオンちゃんの行方を気にするが謎は一向に解けない。
そして米軍による横暴や蹂躙に業を煮やした市民の怒りが沸騰し、暴動に発展した夜、すべての物事が動き出す。アメリカー（沖縄民はアメリカーと呼ぶ）や本土（ヤマトゥ）に蹂躙されてきた歴史の中、怒りと諧謔とアクションとサスペンスと情念が一体になってオンちゃんサーガが描き出されている。
てっきり沖縄出身の作家だと思ったら東京育ちとか。ここまで沖縄の怒りを代弁した物語が書けるのだなと感心した。
