本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

最終飛行/佐藤賢一

ナチスに侵攻されたフランスのために戦い続けたサン・テグジュペリを描く小説である。


作家としてすでに名を成していたサン・テグジュペリは、祖国がナチスに占領され、講和したヴィシー政権(対独協力派)にも失望し、アメリカに渡り、アメリカに参戦するよう働きかけようとする。


ヴィシー政権の他、イギリスで亡命政権を標榜するドゥ・ゴール派、北アフリカの植民地に拠る政権など、フランスを巡る政治状況は複雑で、サン・テグジュペリはドゥ・ゴール派を嫌い、批判の矛先とするが、これが後にトラブルの種にもなる。


祖国のために戦いたいと、北アフリカフランス軍に復帰したサン・テグジュペリは、アメリカから供与された最新鋭機に乗務するが、事故を起こし除隊。しかし、伝手をたどって働きかけを続け、何とか常務に復帰するのだった。


情熱家で社交好きで愛国者で一本気だが、あちこちの女に言い寄る浮気者だし(妻に離婚を切り出されると拒絶するくらいに愛しているが、他の女性にも愛情を寄せている)、最新鋭機に乗りたいがために軍令を無視したりもする、規律を守らないような身勝手さが後に最後の悲劇を呼ぶことになる。ヒロイズムに酔い、子供のように我が儘で好き勝手に生きてきた男なのだなぁ。自分的にはあまりお近づきにはなりたくないが、人好きのする魅力的な面もあったのだろう。


なお、星の王子様に登場する我が儘なバラは妻のコンスエロだそうだし、戯画化された登場人物たちも当時の政治家たちを表しているとか。