本・花・鳥(ほん・か・どり)

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続 横道世之介/吉田修一

横道世之介続編suijun-hibisukusu.hatenablog.com



のほほんと生きていて若いうちに亡くなった横道世之介を、共に過ごした人々が東京オリンピックが行われている(はずの)2020年から時々回想する体裁の小説。


バブル崩壊にぶち当たって就職出来ず、バイトとパチンコで食いつなぐ世之介は、無責任で自堕落で将来の展望もなくのんべんだらりと生きているが、底抜けの善人でもあり、それが物語の基調になっている。


気の合う友人コモロンとくだらないことを言い合いながら呑み歩き、女だてらに寿司職人を目指す浜ちゃんとパチンコ台を取り合い、子持ちの元ヤン美女桜子と恋愛し、自堕落だがその日々は妙に充実している風でもある。


そして共に生きた人々は2020年から世之介を懐かしむ。何だか宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」の主人公を思わせるような世之介だった。