墨田区の下町育ちの幼なじみである有田国政と堀源二郎の二人をユーモラスに描いた老人小説である。
実直で堅物の銀行員として生きてきた政に対し、つまみ簪職人の源は自由奔放で飄々として無茶苦茶な爺さんであり。横鬢にわずかに残った髪の毛を赤やらピンクやら青やらに染めるようなおちゃらけぶりだ。
大恋愛の末に一緒になった妻とは早くに死に別れた源に対し、普通に見合い結婚をし、穏やかな家庭を営んできたと思っていた政だが、妻には熟年別居され、孤独に暮らしている。
孤独な侘しい生活を送る政は、馬鹿っぽいけど気の良い弟子徹平がいて、弟子の彼女も慕ってくれる源が羨ましくて仕方がない。寂しさから源の家にちょくちょく顔を出し、しかしやっかみの念も湧いてくると言う、なかなかに複雑な心境を上手く描いている。
徹平から仲人を頼まれてしまった政は、別居している妻を口説き落として結婚式に参加させることが出来るのか?その涙ぐましい努力も笑わせる。
元気な老人を描いて楽しい小説だった。
- 作者:三浦 しをん
- 発売日: 2017/06/22
- メディア: 文庫