古びた洋館に暮らす女たちを描いたユーモア小説。
刺繍作家や刺繍教室で生計を立てる佐知は地味でウジウジした暮らしをしているが、母の鶴代は家付き娘であり(甲斐性のない婿を追い出している)、我が儘でマイペースで、この母に翻弄される佐知が滑稽。
この家に、佐知の友人である雪乃(強気でクールな美人だがなぜか目立たない風貌で、よく他人に間違われる)、雪乃の会社の後輩多恵美が訳あって暮らすようになり、女四人の生活がドタバタと展開される。
軟弱ストーカーに付きまとわれたり、盗人が入ったりと言った事件もあるにはあるが、それ以上に派手なことは起こらず、時にギャグめいた描写を交えながらまったりと進む物語は幸福感に満ちている。佐知は、このさき四人の暮らしに何らかの変化が起きるかもしれないという漠然とした恐れを抱いているが、今はこの幸せを感じていればいいと考えて結末。
- 作者:三浦 しをん
- 発売日: 2018/06/22
- メディア: 文庫