本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

フィフティ・ピープル/チョン・セラン

最近、話題作の紹介が多い韓国の現代文学である。ある大学病院を中心に、そこから派生する様々な人間を描いた掌編小説集。
 

登場するのは病院の医師であったり(スリリングなことが好きで救急医療を選んだ、アドレナリン・ジャンキーの異名を取る医師が笑える)、その患者であったり、精神病棟の乱暴な患者に手を焼く警備員であったり、顔にフォークで刺された傷のある、暴れる患者の姉であったり、その姉のルームメイトであったりと、話は脈絡なく拡がっていく。フィフティ・ピープルというタイトルは登場する人数であるが、実際は50人ではなく51人であるそうだ。


基本的にはユーモラスないい話が多いのだが、時に悲惨なストーリーもあったりする。ユーモアと悲喜劇と寓話性という感じで、何となくジョン・アービングのスタイルを思い起こすのだが、影響があるだろうか。


最終篇では登場人物たちが一堂に会する場面があったりするが、これはちょっと余計だった感も・・・。51人を並列に描くだけで良かったのではと思う。しかし、非常に面白く読後感の良い掌編集だった。

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)