本・花・鳥(ほん・か・どり)

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麒麟児/冲方丁

江戸城無血開城を主導した勝海舟西郷隆盛を描いた歴史小説


勝海舟は何度も主君慶喜に裏切られながら、国の行く末や江戸の民のことを思い、何とか戦乱を避けようと努力しており、そのためには江戸を焼くぞと新政府を強迫したりもする大胆な政治家である。もはや幕藩体制は立ち行かなくなっているし、国を新しくすることに異存はないが、新政府の好き勝手にはさせないぞという意地があって痛快。


一方の西郷隆盛も、大きく打てば大きく響くような好漢であり、好漢二人が腹のさぐり合いやらはったりやらを使いながらも、お互いを認めている感。余談だが、西南戦争の後、勝は西郷の名誉回復に尽力しているそうだ。


勝も西郷も、それぞれの陣営の愚物に手を焼きながら新しい国を作ろうと努力しているが、結局は様々な行く立ての末に西郷は自刃。勝の懐古が二人の友情を感じさせて感傷的だ。


全体として面白くはあるのだが、ただあまり新鮮な印象もなく、もう少し新味のある物語を読みたかった感じ。むしろ勝の腹心となる山岡鉄舟を主人公に据えれば更に面白かったのではないか。

麒麟児

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