本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ぬけまいる/朝井まかて

NHKでドラマ化されていたので読んでみた。

伊勢神宮への抜参りが流行っていた頃、かつては「猪鹿蝶」と呼ばれて町内で一目置かれた三人娘も二十代後半(江戸時代なら年増と呼ばれる)である。

一膳飯屋の娘で向こうっ気は強いが未だに自分探しをしているようなお以乃、親の小間物屋が傾いているのを建て直した商売上手で、亭主も子供もいながら役者買いにうつつを抜かすお蝶、浪人の娘で、嫁いだ先で姑と夫に気を遣っているお志花と、それぞれに煮詰まり、意気消沈した三人は突如抜参りを思い立つ。

しがらみを捨てて東海道を伊勢へ向かうが、そう簡単には行かず、途中でトラブルに見舞われたり、しかしそこを機転で切り抜けたりと、波瀾万丈の女三人旅が繰り広げられる。

単に友情の話ではなく、そこはかとない反目もある。痛快でもあるし切なくもある。そのあたり、やっぱり上手いものだ。旅したからと言ってすべてが上手く行くわけでないが、カタルシスのある終わり方だった。折々に挟み込まれるエピソードも効果的。ロードノベルとして非常に面白かった。