著名な詩人が韓国語学習のいきさつや韓国への思いを綴ったエッセイ。30年以上前に上梓された内容であるから、韓流ブーム以降のような韓国語熱は当時はまだなく、NHKの講座すらなかった時代では韓国語学習は奇異な目で見られたらしいが、韓国の詩人が好きであったこと、隣国の言葉だから、と言うような様々な理由があったらしい。
自分も韓国語学習の徒であるから共感する部分が多いが、韓国語と日本語との類似性を殊更に挙げていくのはどうなのだろう。関係があるかもしれないしないかもしれないし、軽々に「これとこれが似てる」と言ってはいかん気がする。
しかしながら、韓国の風土や文化や国民性を語る部分では歴史に対する謙虚さを持ちつつ隣国に対する思いが詩情豊かに語られて、この人は随筆の名手でもあるのだなと思わせた。ただ、30年以上前の韓国であるから、経済発展や民主化、アジア通貨危機などを経た昨今とはだいぶ変わっているのではないかとも思う。
自分が韓国語に興味のある人間だから面白かったが、そうでなくとも、ひとつの紀行随筆としても名品ではあるまいか。