本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ウィンター・ホリデー/坂木司

ワーキング・ホリデー続編。

いきなり小学生の息子が現れ、父親になったヤンキー上がりの元ホスト(現在は宅配業)沖田大和は、息子が出来た喜びにはしゃぎ気味だが、一方で母親(元恋人の由希子)の存在も気にかかる。

息子と過ごすうちになにかと由希子との接点も出来て、息子が仲立ちとなりそうな展開は古典落語の「子別れ(別タイトル「子は鎹」)」の本歌取りではあるまいか。ただ、そこまで行くにはまだ道は遠そうだ。

本作にはいろいろグッとくる台詞もあり、それもまた読む楽しみ。「おかまのジャスミン(大和をホストとして雇い、一人前の大人になるよう教育したホストクラブ経営者)」が「何でも聞きたがるのは子供とお馬鹿さんだけ」と説教したり、物質的な不自由はないものの親に放置されて育ち、さびしさを紛らわすためにホストクラブに入れあげていたナナ(20代の派手ギャル)がアルバイトを始めて喜びを知り「なんか私、ずっと長いお休みにいたような気がする」という台詞を受けて、大和が「ホリデーはいつか終わる。そんなことは、当たり前のことだ。ただ中には、出口を失ったり、終わりたくないとあがいてみる奴もいるってことだ。」と述懐するシーンが印象的。

読後感の良い家族小説兼お仕事小説である。