本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

室町無頼/垣根涼介

下克上が始まりつつある時代の京を舞台に、最下層からの革命を画策する者たちを描いた時代小説。

主家を離れた下級武士の子、才蔵は、村の厄介者として最低限の暮らしをしていたが、父の死を契機に村を離れ、ひとりで生きていこうとする。過酷な暮らしの中で身に付けた体力と技で金貸しの用心棒に雇われると、やくざ者を束ねて京の警護を請け負っている道賢や、一揆を組織する蓮田などと知り合い、彼らと共に行動するようになっていく。

いずれの人間も無頼漢ではあるが、庶民を搾取して肥え太る一部の権力者に対する反感と正義感は強い。無頼として分かりやすい道賢と違い、優美な佇まいながら凄腕で、思い切ったことをしでかす蓮田の度外れっぷりが痛快。

過酷な修行の果てに棒術の達人の域に達した才蔵は彼らに荷担する。下克上の果てに彼らの夢見たような庶民の時代が来たのだろうかと思うが、気高く戦う漢たちを活写している。