本・花・鳥(ほん・か・どり)

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ブッポウソウは忘れない 翼の謎解きフィールドノート/鳥飼否宇

著者は野鳥保護活動でも有名なミステリー作家である。本作はその領域でのミステリーとあって鳥好きとしては興味を持たずにいられない。

主人公の宗像翼は鳥類学を専攻する大学四年生。上級生に恋をし、特に目標があった訳でもないのに上級生のいる方へ進路を決めてしまった頼りない青年だが、まぁ好青年ではある。恋した上級生は思わせぶりな言葉を残し、母親の看病のために休学、なにかと疑心暗鬼でやきもきする日々を送ることになる。

そして、研究室内で起きる謎を推理していくと言う連作ミステリーの体裁だが、ミステリーとしてはやや弱いような気も。話の運びにも今ひとつリアリティがなく、学生の求めに応じて守衛が防犯ビデオを見せるなんてことがあるのかと思ったりする。

しかし、一番大きな謎が最後に氷解し、それまでの伏線も生きてくる結末でおぉっ!となった。野鳥の生態も含めて鳥好きにはやはり面白い青春ミステリーだ。