本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

敬語で旅する四人の男/麻宮ゆり子

以前に読書SNSで感想を読み、気になっていた。もうこのタイトルだけで勝利という感じがする(笑)。

四人の男たちがそれぞれ主人公となる連作で、それぞれに訳ありの過去を持っている。第一編の主人公真島は二十代のナイーブな青年で、両親が離婚した後、十数年母親に会っていない。母が住む佐渡を訪ねるという気の重い旅行に、なぜか斎木先輩が同行することになり、更に斎木先輩つながりの同行者が二人加わり、親しいようなやや気詰まりのような、敬語で話す関係が展開されるのだった。

真島にとって斎木は私立校での上級生だったが、直接に知り合いではなく、真島の勤める会社に後から入社してきた関係である。美術部員だった真島は、風変わりな美形である斎木が絵の登場人物のように見えてずっと目で追っていたのだが、知り合いではなかった。しかし、在学生の顔と名前を諳んじている斎木は真島のことも知っていたのである。

斎木はいわゆる発達障害と思われる描き方をされている。優秀な頭脳を持ちながらも微妙な感情や表情を読み取ることが出来ず、例えやほのめかしは通じず、言われたことをそのままに解釈してしまう。その行動はユニークで自分勝手にも映るが、真実を見抜く目を持っていることで、友人たちの周辺にあるモヤモヤをずばりと指摘するあたりが痛快。

最終篇では彼自身の恋愛も描かれており、何とか幸せになって欲しいなぁと思う(前途多難だろうけど)。主人公たちの抱える重たさがアクセントとなり、或いはそれ故にユーモラスで爽やかな友情物語になっているところが良し。それにしても絶妙のタイトルだ。