竹の精である吸血鬼をモチーフにした連作集で、どれも読ませるが、第一編の「ちいさな焦げた顔」が特に胸に迫る。犯罪うずまく都市に暮らす主人公は、何人目かの継父のおかげで豊かな暮らしをしていたが、継父の不祥事により組織の報復を受けて母と姉が惨殺される。自分も殺されると覚悟していたところを異形の者に助けられるのだが、これがバンブーと呼ばれる吸血鬼で、二人のバンブーの庇護のもとに成長していくのだ。
闊達で放埒なムスタァと物静かで思索的な洋治の二人のバンブーは少年を梗ちゃんと呼び慈愛を注ぐが、人間と暮らすことはバンブーの掟に触れることであった。
裏切り、辛く悲しい別れ、再会などがドラマチックに描かれ、人間とバンブーの間に通う思慕の念が優しく切ない。どの桜庭作品もそうかもしれないが、倒錯的でインモラルで官能的で哀切でとても美しい吸血鬼物語である。
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/09/26
- メディア: 単行本
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