本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

眩(くらら)/朝井まかて

葛飾北斎の娘である栄(画号は応為)を描いた時代小説。

葛飾応為が主人公の作品と言うと杉浦日向子の「百日紅」が思い浮かぶが、百日紅のお栄のように図太く自由闊達ではなく、父親の画業には到底及ばないと思いながらも何とか自分オリジナルの絵を作り出そうと日々精進する姿が印象的。

家事や結婚と言ったことには不向きで、画業を最優先して母親をやきもきさせる点ではやっぱり無手勝流の感じがするが、いかにも小市民的な母親との確執も読みどころ。そういう母親に対する愛情が描かれるのもしんみりさせる。

彼女の代表作である「吉原格子先之図」が生み出されるまでの試行錯誤が絵師らしさを感じさせ、どこまでも一人の画工として生きようとする姿が痛快だ。

余談だが、夜景好きなので「吉原格子先之図」は本当に美しいなぁと思う。