本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

武士道ジェネレーション/誉田哲也

二人の剣道少女の成長を描いてきた「武士道シックスティーン」「武士道セブンティーン」「武士道エイティーン」に続く本作では、大人になった二人の現在が描かれる。

傲岸不遜、闘志むき出しで、剣道は斬るか斬られるかだと公言して憚らない磯山香織は女子剣道界で着々と地歩を固めていたが、薫陶を受けた桐山道場が閉鎖されるかもしれないという危機に、自分が後継者たるべく、更に過酷な稽古に邁進することに。この過程で香織の剣道は更に深化していく。

ここまでは良いが、問題はもう一人の剣道少女、河本早苗である。日本舞踊を習っていたおっとり型の早苗は、中高時代には香織の良きライバルであり親友でもあったが、靱帯を傷めて剣道からは遠のいている。それでも香織の道場に関わったりして密接な間柄ではあるのだ。

しかるに、大学に進んだばかりの早苗は突如いわゆる自虐史観批判を展開し始め、従軍慰安婦問題や南京大虐殺問題への非難を披露する。おそらく作者の思想なのだろうが、本筋と何も関係のない政治的信条を青春小説に持ち込む神経が分からぬ。剣道マニアのアメリカ人は、外人が日本をヨイショする番組みたいで気持ち悪いし。

香織の剣道が深化していく場面は読ませるし、アメリカ人ジェフとのバトルは迫力満点で、香織の成長のキモでもある。それなりに期待を裏切らない作品であっただけに唐突なネトウヨぶりが残念だ。