本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

マルトク 特別協力者 警視庁公安部外事二課ソトニ/竹内明

著者の本業はTBS記者で、キャスターとして夕方のニュースにも出演している。警察やインテリジェンスの世界に詳しいらしく、その方面に何冊かの著作があるが、本作はノンフィクションではなく、諜報の世界を舞台にしたミステリー。

かつて外事二課のスパイハンターとして活躍した筒見は、現在は外務省の警備対策官として外様に回されているが、本作はこのシリーズの二作目で、前作「背乗り(ハイノリ)」で相当過酷な目に遭っているらしい。本作では、北朝鮮からの亡命希望者を保護できなかったことから権力闘争に巻き込まれていく。

二転三転するストーリーはとてもスリリング。事件の真相は終戦時の朝鮮半島にまでさかのぼっていく。国益という言い訳のもとに国民を見捨てて顧みない政治家や官僚の姿が醜悪で、その分だけ物語としては面白くなるが、もしやこれが真実の姿なのではと思うと薄ら寒くなる。ノンフィクションだと書きたいことが書けないからフィクションの体裁にしたという情報がアマゾンに出ていたが・・・。

この著者には何度もスクープを抜かれて悔しい思いをしたと実話系フリージャーナリストがツイートしているが、端正な二枚目ぶりから想像できないハードな世界を構築できるのだなぁ。