本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

けさくしゃ/畠中恵

偐紫田舎源氏で有名な柳亭種彦を主人公とするユーモラスな連作時代小説。

高屋彦右衛門は小普請(役の付かない、江戸時代の窓際族)の旗本で、向こうっ気は強いが腕は立たず、妻女の勝にべた惚れの愛妻家だ。狂歌が得意で、そこに山青堂という出版業者に目を付けられて戯作を書けと勧められ、軽薄なお調子者の山青堂に乗せられてついその気になり、その過程で出くわす様々なトラブルを得意の戯作で解決してみせるというなかなかに凝った趣向である。

江戸の出版システムを解説しながら作中に取り入れているのが上手い。書くことに取り憑かれてしまった業が招く最後のトラブルをいかにしのぐか、スリリングで読ませる。著者は人気の「しゃばけ」シリーズで有名だが、こういう作品も書けるんだなぁ。